スーツの裏側には基本的に裏地と呼ばれるツルツルとした布がついています。この裏地の役割は何なのか?についてまとめました。

歴史を重ねて今のかたちとなったスーツにはパーツのひとつひとつに意味があり、この裏地も多分に漏れず。裏地の役割はおおきくわけて3つ。着心地の良さ、表地の保護、型崩れの防止です。

 

着心地の良さ

裏地がついていない洋服を着用するとわかりやすいですが、厚みのある生地の場合裏地がついていないと腕の入りが悪く着脱しにくいです。これは摩擦によるもので、滑りの良いキュプラ素材やポリエステル素材、レーヨン素材などツルツルとした生地が主流なのはこのためです。現在でもコットン素材を裏地に選んでいる洋服などがありますが、これは着脱がしにくいので袖の裏地だけは滑りのよいものにする工夫が必要です。

 

表地の保護

過去、スーツの表地となるウール素材はたいへん高価なもので、親から子へ、そして孫へというように受け継がれて着用をしていました。どうしても内側は擦れなどにより痛みが出やすい場所なので、傷んでも別の布に張り替えれるようにするため裏地という概念が生まれました。

汗からも表地を守ってくれるので、表地の保護という観点から裏地は必要なのです。

 

型崩れの防止

ウールは伸縮性に富み、シワになっても元に戻ろうとする復元力をもった型崩れしにくい素材です。とはいえ立体的に作られるスーツにおいて、ガイドや骨格となる裏地がついているほうが型崩れしにくいです。

裏地はポリウレタンなどのストレッチ素材などが入っていない場合、ほとんど伸びません。なので表地のガイドとなり、意図したシルエットを出すことができ、仮にウールが伸びても裏地のかたちにそって復元しやすくなります。(もちろん、型崩れを防ぐため、復元力を最大限発揮させるため、スーツの肩にあった太めのハンガーを使用して保管する必要がありますが。)

 

 

いかがでしたでしょうか。

裏地の役割は、着心地の良さ、表地の保護、型崩れの防止。古いものを愛する英国紳士が夏用のスーツにおいても総裏を選ぶのはこの3つが裏地によるものだと理解しているからではないでしょうか。

とはいえ、ここは気候も国民性もちがう日本。夏場に背中部分をくりぬいた背抜きスーツも全然有りだと考えています。