オーダースーツはもとより、ほとんど全ての洋服のサイズには実際の身体のサイズに加えてゆとり寸法というものが入っています。ゆとり寸法が入っていないと、身体をうごかすことはもとより、着用することすら難しいです。

このゆとり寸法に関して、ある程度の目安というものが決まっています。例えばスーツのバストは14、5cm、中胴(ジャケットの一番くびれている辺り)は13、4cmという数字が追加されることが多いです。バストが実寸86cmの方はジャケットのバストは100cmという風に。(もちろん体型によりこの数値を若干変化させること、寸法に反映されない部分のシルエットなど他にも考慮しないと綺麗なスーツはできませんが。)

 

さて、この中胴の寸法は時代により数値が変化している部分になります。拳がひとつ余裕をもって入るサイズがジャストサイズであるという考えが主流でした。今でもイタリアの有名テーラー、ルビナッチなどをみるとこの拳がひとつ余裕で入りそうなサイズ感でつくられています。

対して、当店は作る方のイメージと見せ方を考慮しゆとり寸法を決定させているため、拳が余裕で入らない場合がほとんどです。そうすると画像のようにスーツの第一ボタン周りにX状のシワが生まれることが多いです。これは俗にX皺と呼ばれ敬遠されるものでした。

このX皺、拳ひとつの余裕をとればほとんど出ることはありませんが、それでは多くの日本人のプロポーション的に似合わないというのが私の考えです。過度にシワがはいるのは見栄えがわるいですが、少しX皺が入るくらいのサイズ感のほうがウエストのくびれが生まれ、男らしい胸元が強調されます。足も長く、スタイルが良くみえるため、少しX皺が入っているサイズ感のもののほうが格好良く見えるとおもいます。

もちろん、その方のお立場やお好みによりフィッティングのサイズは変えていますのでご安心ください。オーダースーツは美容院と同じで、お客様とテーラーの相性というものがあります。いろいろな考え方があって良いと思いますので是非お気に入りのオーダースーツショップを見つけてみられてはいかがでしょうか。