昨日に引き続き、映画からスーツネタを拝借。映画007のジェームズボンドといえば、ラグジュアリーブランドのトムフォードで仕立てられたスーツを身にまとい大変格好良いスパイです。そんなボンドのセリフにこういったものがあります。

 

 

『ウィンザーノットにしている奴は信用できない』

ウィンザーノットとはネクタイの結び方の一種で、プレーンノット、セミウィンザーノットと並びメジャーな結び方です。ボンドがこの言葉をつかいウィンザーノットをdisった敬遠した背景は2つあります。

一つはボンドの柔軟性をしめすもの。英国らしい構築的な肩のスーツを着る一方で、作っているところはアメリカのトムフォード(過去作品ではイタリアのブリオーニ)だったり、英国を象徴していたネクタイの結び方であるウィンザーノットを嫌い、プレーンノットにすることにより格式ばかり重んじないボンドの人間性を表現しています。

二つ目は、007著者フレミングの好みによるもの。フレミングは「ウィンザーノットなんて手間のかかる結びをしている奴は顕示欲が強くて、付き合いたくない」とまで述べていたそうです。

 

もちろん本ブログは英国発祥のウィンザーノットが悪いという内容ではありません。

とはいえ、どんなスーツの装いでもウィンザーノットを選ぶことに関しては異議があります。現在日本、海外を問わずクラシックスタイルを体現している人のネクタイの結び方はプレーンノットです。

英国のチャールズ皇太子はじめ、各王子も全員プレーンノット。

ロイヤルファミリーや、多くのウェルドレッサーがプレーンノットを選ぶ理由として、現代のスーツスタイルによるものが大きいです。

ウィンザーノットが生まれた18世紀洋服は固いスタイルが多く、それに合わせて左右対称で固い印象のあるウィンザーノットの人気がありました。

しかし現代はどうでしょうか?生地や芯は柔らかくなりソフトな印象が強くなり、それにあわせる結び方としてプレーンノットが支持されているのではないでしょうか。

 

プレーンノットを選ぶうえで懸念をしめす方の理由で最も多いのが左右非対称であること。きっちりしたいから左右対称だという意見です。

安心してください、それが良いのです。ネクタイは装飾であり、スカーフがルーツのため少しの軽さ(非対称さ)があっても問題はなく、そのバランスが美しいという価値観がプレーンノットにはあります。

逆にウィンザーノットの場合、現代のスーツに似合いにくい固さがあることと、ネクタイの素材の厚みによっては、おにぎりのような大きな結び目になりバランスの悪さから選ばれることが少なくなったと推察されます。

  

すべてはバランスです。プレーンノットでは結び目が小さくなりすぎる場合もありその場合はダブルノットのように2重の厚みにしたり工夫すること。その一工夫がスーツスタイルをさらに引き立ててくれます。