スーツといえばウール素材というように、多くの上質なスーツはウール100%で作られています。原毛、糸、織り方、フィニッシュ(仕上げ)によってさまざまな表情の生地を作れるウール。対して、ウール以外のスーツの素材としてカシミヤ、ポリエステル、モヘア等が挙げられます。100%全てに使用されたものもあれば、ウールにブレンドすることで新たな特性を追加させることも可能です。カシミヤは保温性、肌触りの良さをプラスすることで秋冬に適した生地に仕上げ、ポリエステルは多くの場合コストをさげることができます。

本日ご紹介するモヘアもウールにはない魅力をもった生地をつくることができる素材です。本日はこのモヘア生地について解説していきます。

 

 

春夏の定番素材【モヘア】とは?

モヘアとはアンゴラヤギからとれる原毛のことで、主な産地はトルコや南アフリカ、アメリカです。混同されがちな話では、カシミヤはカシミヤヤギからとれますが、モヘアヤギというのは存在しません。また素材としてのアンゴラはアンゴラヤギではなく、アンゴラウサギからとれます。

生地になったときに、モヘアの比率が高ければ高いほど高級になる傾向があります。成長段階でモヘアの品質が変化していき、モヘアの中でも生後1年未満のアンゴラヤギからとれるモヘアをキッドモヘアといい、通常のモヘアより繊維が細く光沢感増していきます。

 

 

モヘア生地のメリット、デメリット

▼モヘア生地のメリット
・高級感のある光沢
・豊かな色合い
・通気性がよく、シワになりにくい
・ハリがあるので仕立て映えをする

▼モヘア生地のデメリット
・ハリや固さがあるので多少チクチクする
・ウールよりも耐摩耗性が低い

 

モヘア生地のメリット

最も美しいとされる光沢感がモヘアにはあります。混率が100%表記のものに関してはかなり光るので華やかなスーツを作られる際にもぴったりです。そしてモヘアはウールよりも純白度が高い素材なので豊かな色味の染色が表現できます。

また、夏スーツと評される理由が、肌に対する接地面がすくなくシャリっとした質感で、ウールよりも保温性が低く通気性が高いため、涼しい着用感です。またハリがありシワになりにくいことから、美しいフォルムを作りやすく夏場のシワも軽減されます。

 

モヘア生地のデメリット

上記のようなメリットがあれば、モヘアにもデメリットがあります。メリットであったハリや固さが逆にデメリットになってきます。ハリ、固さというのは肌触りに影響を及ぼし、肌の弱い人にとってはチクチクすると感じられる場合もあるようです。また固さがあることで摩擦による影響、耐摩耗性がウールよりも低くなるのも欠点です。通常着用する分には問題ないですが、強い擦れには注意しないといけないということです。

 

 

モヘアについて、まとめてみましたがいかがでしたでしょうか。完璧な素材が存在しないようにモヘアにも良い点、悪い点があります。ウールとモヘア、どちらが良いかという話ではなく、着用シーンや見せ方によって使い分けをされることが正解です。もし今までウール100%の生地のスーツしか着られてこられなかった方は是非この夏、このモヘア素材のスーツをお試ししてみてはいかがでしょうか。